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研究

研究ノート

2021/03/05

宇宙サイバーと先端技術研究会 研究報告(No.1)「デジタル変革(DX)と宇宙領域での軍事活動」(防衛研究所主任研究官 福島 康仁氏)

宇宙サイバーと先端技術研究会 研究報告(No.1)

「デジタル変革(DX)と宇宙領域での軍事活動」(防衛研究所主任研究官 福島 康仁氏)を掲載しました。

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はじめに

 新型コロナウィルスの感染拡大により経済・社会活動は多くの面で停滞を余儀なくされている。そうした中、逆に進展をみせ始めているのが企業や行政によるデジタル変革(DX)への取り組みである。DXは先端的なデジタル技術の単なる活用を意味するのではなく、そうした技術の活用を通じて組織の体制や文化、活動のあり方が変容することを指す。DXに取り組む目的は、例えば企業の場合は競争上の優位性を作り出すことにある[i]。さらに個々の組織によるDXはやがて社会全体の変革をもたらすと考えられており、日本では「Society 5.0」を実現する原動力になると期待されている[ii]

 現状、DXという言葉の使用は経済界とその関係省庁が中心である。だが、宇宙利用や軍事活動も社会的営みの一部であることを考えれば、DXによる社会変革の波が宇宙領域での軍事活動にも及ぶ可能性は否定できない。すでに宇宙利用の分野では情報通信技術の活用を通じてイノベーションをもたらそうとする動きがある[iii]。軍事分野では軍民両用技術に注目が集まっており、とりわけ民生技術の軍事転用が顕著になっている。こうした中、例えば米宇宙軍(USSF)はDXという概念を明確に意識しながら、イノベーションの加速を目的として「デジタルな軍隊」の構築を進めている[iv]

このような状況を念頭に置くと、今後、宇宙の軍事利用について考察する際は、DXが与える影響を考慮していく必要がある。すなわち、主として民間企業により生み出される先端的なデジタル技術やサービスを各国の軍隊がどのように宇宙領域で活用しようとしているのか、また、そうした活用を通じて軍事組織の体制や文化、活動のあり方にどのような変容が起き得るのかに目を向ける必要がある。

もっとも、ある取り組みがデジタル化にとどまるのか、それともDXへと発展し組織の体制や文化、活動のあり方にまで変容をもたらすのかは、実際に変革が起きた後でなければ判断できない。この点、軍事宇宙活動における先端的なデジタル技術の活用は構想や研究・開発、実証試験の段階にとどまっているものが多い。

そのため本稿では軍事組織による宇宙領域での先端的なデジタル技術の活用事例(主に米国の取り組み)に着目し、それらがDXへと発展した場合の意義を予備的に考察する。あわせて、DXに向けた取り組みがもたらし得る余波について考える。

(以下本文(こちら)をご参照ください)



[i] 経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」Ver. 1.0、2018年12月、2頁。

[ii] 「Society 5.0」は、情報通信技術を最大限活用しサイバー空間とフィジカル空間を融合する超スマート社会である。「科学技術基本計画」2016年1月22日閣議決定、11頁。

[iii] 例えば下記を参照。総務省宇宙×ICTに関する懇談会「宇宙×ICTに関する懇談会報告書~ICTが巻き起こす宇宙産業ビッグバン~」2017年8月。

[iv] Theresa Hitchens, "EXCLUSIVE: Space Is at Heart of JADC2, Says Maj. Gen. Crider," Breaking Defense, December 23, 2020, https://breakingdefense.com/2020/12/exclusive-space-is-at-heart-of-jadc2-says-maj-gen-crider/; John Morris, Shannon Pallone, Brian Denaro, Jim Horejsi, and Josh Train, "US Space Force Digital Engineering Ecosystem," Space and Missile Systems Center, U.S. Space Force, 2020, p. 8; U.S. Space Force, Chief of Space Operations' Planning Guidance, November 2020, p. 10.

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